「行っちゃったね、また来るよね・・・王子、ツナヨシと遊びたいや」
「・・・そのうち来るだろ」
XANXUSは飛行機が見えなくなると、すぐに建物内へと戻っていく。
それに皆が続く形で入っていく。
マーモンはXANXUSとツナヨシの様子が昨日とまったく変わらないことに疑問を抱いていた。
綱吉はXANXUSに、XANXUSは綱吉に好意を抱いていることは、周りから見たら明らかだった。
昨日の綱吉の疑問にXANXUSが答えていたら、何かしらの変化が見られると思っていたのだが。
「ねえボス?」
「何だ」
「綱吉、昨日何か言わなかった?」
「・・・何のことだ」
「え?」
綱吉は聞かなかったのか。
あれだけ気にしていたことなのに、聞かなかったのか。
余計なおせっかいをすべきか迷ったが、一応このせりふを言った。
「・・・綱吉の情報、いつもの倍額で」
「三倍出す、言え」
マーモンは毎度あり、と言いたい口を押さえて、XANXUSに情報提示した。
『綱吉は書庫の辞書のメモをしきりに気にしていた。その文字の宛先を知りたがっていた』
マーモンがXANXUSにもたらした情報はこれだった。
書庫で何を読んでいたかと思えば、一番手にとって欲しくないものを手に読んでいたようだ。
あの部屋にある本で綱吉が読めそうなものはほとんどなかったのかと、今になって気づいた。
「・・・ち、気づいても後の祭りか」
そう一人ごちて、書庫へと足を進めていた。
二日間のほとんどをすごした綱吉のずっと見てきた景色だった。
自分も使うために置いたソファに綱吉がいて、足が上手く動かなかったから手の届く範囲なら限られていて、このソファから届く場所に辞書を置いていたのだから、手に取ってしまうのも仕方がない、日本語で書いてある数少ない本だから。
「わざわざ手に取って読んじまったか・・・ドカスが」
メモの一つ一つは何気ないものばかりだが、その中には恥ずかしい文字の羅列もある。
間違いなくそれを見た綱吉が、マーモンに質問したのだろう。
誰に当てた言葉なのかと。
辞書を手に取り、ぱらぱらとめくり、そこから一枚の紙がはらりと落ちた。
XANXUSは自分が書いてメモであろうとそれに手を伸ばすが、それを拾わずに、一瞬止まってしまった。
「これは・・・」
明らかに自分が書いたものではない文字が目に入ってくる。
ドクンと心臓の跳ねる音がした。
二つ折りにされたその紙を手にして、中を見る。
『XANXUSへ
見てくれるかわからないけれど、書きます。
自分のお世話してくれてありがとう。
仕事の邪魔になっちゃってごめんなさい。
服、選んでくれて嬉しかったです。
女の子の服を着るのも、裸見られたのも恥ずかしかったけど、少しの時間でも一緒にいられて幸せでした。
ありがとう。
おれ本当にXANXUSのことが好きでよかったです。 綱吉』
全部日本語で書かれたその紙の端に小さく、『Tiamo』と書いて消した後があった。
他にもありがとうもごめんなさいも嬉しいも、練習した後があって幾つも消し跡が残っている。
「何で・・・」
ぎり、と歯を噛み締めたXANXUSはそのメモを握り締めたまま執務室へと戻り、幹部全員を集めた。
そして任務と他の調査の仕事を全部押し付けて、部屋を飛び出した。
「う゛・・・お゛おい!?なっ何で任務押し付けられんだあ!?」
「ボス行っちゃったんだね、シシ。王子張り切って任務行こっと」
「ボ・・・ボス!?どちらへ!?」
「ボスったら・・・愛に走るなんて・・・ステキ!!」
「情報は有効だったみたいだね」
各々が色々と言葉を投げ出すのすら耳に入ってない様子で廊下を走るXANXUSは、先程綱吉を送ったボンゴレ専用の飛行場へと向かっていった。
圧力ともいえる怒気をパイロットにぶつけ、専用機を飛ばしてXANXUSも大空へと消えていった。
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