お互い少し距離を取って話していた。
緊張、しつつ。
そんなお互いの空気を破ったのは綱吉からだった。

「スクアーロ、あの時のオレのことって誰かに聞いた?」
「いや・・・ボスに会う機会も他の奴らに聞く時間もなかったからなあ」
「そっか・・・一応スクアーロに話しておかなきゃと思ってたんだけど」
言いづらそうにしていた綱吉。
心なしか顔が赤くなっていた。

「聞く聞かないはスクアーロに任せるよ。仕事としては重要じゃないことだけど・・・」
「聞いていいのかあ?」
「うん、スクアーロなら話せるし。聞いてくれるなら聞いて欲しいと思ってる。」
「・・・聞いてやるぜえ・・・」
そんなに大事じゃないんだけど・・・と綱吉は言ったが。
笑い事ではない事態を巻き起こし、アレだけの被害を起こしたのは大事ではないのだろうか。
心に思ったが口に出すことはなかった。





「あの日、ある場所で九代目代行で会合に出てからパーティ出席が予定だったんだけどね」
「おお」
「会合は獄寺くんが何事もなく収めてくれたけど、パーティのほうで・・・」
「・・・なにやらかしたんだぁあ?」
「・・・オレ普段は平気なんだけど、体調悪いときにアルコール飲むとちょっと記憶飛んだり暴走したり・・・・するんだよね・・・」
「はああ!?」
「あの日ちょっと・・・気をつけてはいたんだけど・・・」
「体調悪かったのかあ!?」
「う・・・あの・・・ね、生理・・・で・・・・」

語尾が聞き取れないほど小さくなっていってしまった。
綱吉の顔を見ると真っ赤になってしまっていた。
話してる相手が女のオレでこれだ。
他の奴らに伝えたとき、特にXANXUSに言ったときの大変さが予想できた。

「・・いつもはほとんどお酒も飲まないから、でも、あの日はちょっと失敗・・・というか飲んだの気づかなくて・・・」
「っ!無理やり飲まされたのかあ!!!?」
「ちっ違うよ!さすがにそこまでバカじゃないってば!!」
「じゃ何だ・・・ああ・・・」


そこまで話して気がついた。
オレの予想通りのことだったんだろう。
「原因、オレなんだなあ・・・」


当たり前なことだと思った。
自分の思い人が部下とはいえ着飾った女と同伴でホテル、しかも宿泊予定。
それを自分でお膳立てして、あの有様か。

「っっっ!綱吉ぃ、バカじゃねえのかああ!!」
「!?」
「オレとXANXUSが一緒に行くのが嫌だったらお膳立てなんかすんじゃねえ!」
「ち、違うって。元々スクアーロに行ってもらうのは予定してたことで!」
「それでもだ!自分の身を滅ぼしてまで他人に気をかけんじゃねえ!!ばかやろぉお!!」



オレのでかい声に吃驚して、綱吉は黙ってしまった。
ちょっと言い過ぎたと思ったが、それでもここで言わなくては綱吉はまた同じ過ちをするに違いない。

しばらく黙ったあと、オレが綱吉に話してやった。



「てめえのおかげで、オレはしっかり振られたんだあ。てめえしか愛せねえ、ってとんでもねえ告白つきでな。」
言いづらいこと、だからオレは下を向いて話した。
「あんだけ着飾ってあんだけ隣にいてもなあ、ボスにゃてめえの顔しか映っちゃいねえ。安心しろよ、あいつはてめえのもんだあ」

綱吉の気配が動いた。
オレの目の前に来て、それでオレの頭を抱きしめた。

「ごめん、ごめんね。スクアーロ、ありがとう、スクアーロ」
ぎゅ、てされた綱吉の胸は暖かかった。
「スクアーロ綺麗だった、だからXANXUSとお似合いに見えて・・・ね。ちょっとだけつらかった」お互い顔が見えない、この状況がちょうどよかった。

「まだまだおれ、子供にしか見えなくて・・スクアーロがうらやましかった・・・」
「オレはてめえのほうがうらやましいよ・・・真っ直ぐにボスにぶつかれる勇気がてめえにゃある」
「・・・へへ・・」
「・・お゛お・・・」


二人で、少しだけ泣いた。
暖かかった。



綱吉のとろけるような笑顔と綺麗な涙。
やっぱりこいつは天使か女神なんじゃないかと思った。













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