綱吉は本部についてすぐ目を覚ましたらしい。
もちろん自分の起こした事については全く憶えておらず、傷だらけの自分には疑問を抱いたらしいが
話を聞き、赤くなったり青くなったりしたとのことだ。

オレは早いとこ綱吉に会って謝りたかった。
傷は、悲しくも前回つけてしまった場所と同じ場所だった。
そのときよりも深く、傷になってしまったと思う。

しかし、綱吉の回復を待っていた事も後処理に追われていた事も、オレ向きの優先すべき仕事があった事もあって
なかなか綱吉に会う機会に巡り合えなかった。

同じくXANXUSもヴァリアーの仕事に加え、何かと綱吉の元を訪れていたために、
オレとはすれ違いが多かった。
結局、オレが二人に会えたのはあの日から一ヶ月近く経ってからのことだった。




「・・・綱吉、いるかあ゛あ゛?」
本部の綱吉の部屋の扉を叩く。
間髪いれず、というかもう気配に気づいてようですぐに声が返ってきた。
「入って良いよ、スクアーロ」
いつもなら色んな奴がひっきりなしに出入りしているボスボンゴレの部屋だったが、今日はめずらしく綱吉一人だった。

「時間通りだね、待ってたよ・・・待たせたねの方が合ってるよね」
「お゛お゛!待ってたぜえ!」
「ごめんね、仕事いっぱいそっちに回しちゃったみたいで・・・」
「仕事はいつもどおりだああ、ボスにゃこき使われてるんだあ」
オレがにかっと笑う、その顔を見て綱吉も同じく笑った。

「出来ればヴァリアーの仕事減らせればいいんだけどね」
「そりゃ無理な話だろうなあ、こないだみたいな事しなきゃ減るんだろうけどよぉ」
「う・・・それを言われると・・・ごめんなさい」
ちらと綱吉を見ると、ちょっと小さくなっていた。
悪いとは思っているんだな。

「それと、スクアーロ・・・この間は有難う」

礼をいわれることは、していないと思った。
逆にコッチが謝るべきだというのに綱吉はいつもどおりにそう言った。
「いや、こっちこそ悪かったなあ・・・顔の傷、大丈夫だったかあ?」
「んー、もうちょっとかな。しばらくしたら薄くなるって」
そう言いながら、傷の残る頬を軽くなでた。
傷自体は隠れていたが、他の箇所の包帯がすでに取れているところを見ると相当深く切っちまったようだ。

「・・・・本当に悪かったあ・・・」
「ううん、それだけ本気で止めてくれたんでしょ。そうじゃなきゃ止められなかったってことだし。」
それだけ暴走しちゃったってことだから・・・。
綱吉の手元でカチャカチャと音が鳴っていた。
「こっちこそごめん、仕事増やしちゃったしね」
慣れない手つきで紅茶を用意した綱吉が苦笑しながら茶を出してきた。

「普段なら誰かに美味しいの入れてもらうんだけど、今日は皆にあちこちに用事で出てもらってるから・・・」
「別にかまわねえぜえ、花嫁修業しろって言われてんだろ」
「あははは、それもあるけどこういう時でもないと自分で入れる機会がないからね」


綱吉のお茶は旨かった。
多分これも綱吉の努力の成果だろうと思った。






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