熱暴走。
一番しっくり来る言葉がそれだった。
綱吉の状況は大変だった。
周りは見えてないわ、声は届かないわで、もちろんこちらにも攻撃してくる始末。
守護者連中も綱吉相手では手が出せずで。
同じく救援で駆けつけたヴァリアーの面々も、
綱吉に傷つけたらXANXUSに何をされるかわかったものではなかったために手が出せなかった。
疲れて攻撃がやむまで相手をする、そのために郊外にひきつけて来た。
これが今の状況といったところのようだ。
「まあ、カス共にしては上出来だ」
「う゛あ、どうなってんだああ綱吉はああ!?」
近づくだけで攻撃対象になってしまうほど、今は本当に危険だった。
寸でのところで攻撃をかわす。
XANXUSも同様にかわして、綱吉から離れた。
「う゛お゛い、ボスさんよぉお!あいつの変化に心当たりねえのかああ!?」
色々思い当たる節はあったが、どれも候補としては薄い。
もしかして、XANXUSとオレが一緒に出かけたことが原因だろうか。
なぜにここまで暴走するほどのことが起こったのか。
XANXUSの表情にわずかに変化が見られた。
ボスには心当たりがある、ようだ。
「心当たりは・・ある、が、止めるのが先だ。あの状況はどうにもならん」
「!?はあ、なんだそりゃああ!?
はためくスカートの裾を縛りつつ、意を決す。
すでにボロボロになってしまった靴はもはや足を守る機能をぎりぎり保っている程度になっていた。
思い切って靴は捨て。
綱吉に切りかかった。
自分の獲物は洋刀、両刃のものだ。
刃先を当てないとなると、かなりの根気と体力と気力がいる。
ほぼ体術のみで対応していくしかなかった。
同じくXANXUSも銃は仕舞ったまま、体術での応戦を続けていた。
力では勝てるものの、スピードや軽さは綱吉のほうが圧倒的に上。
さらに炎の噴射で速くなる身体を捕らえるのは非常に困難だった。
「綱吉ぃい!!う゛お゛い!つなよしっぃい!」
声に多少反応があった。
その一瞬の反応の隙に、当身を試みる。
XANXUSが同時に攻撃を開始し、それをかわす為に綱吉が受け手に回った。
周りから見たらほぼ一瞬。
数回の攻防の末、綱吉はオレの手に落ちた。
気を失わせることに成功したのだった。
気を失った綱吉は重かった。
オレはもちろん、綱吉も周りからの攻撃で今日に合わせたスーツがボロボロになっていた。
せっかく綺麗にしていたであろう化粧もほぼ落ちきっていて。
そして、その頬には。
今まさにつきましたと言わんばかりの傷がついてしまっていた。
「・・・やっちまあったああ・・・」
守護者の連中が慌ただしく医務班を呼び、周囲の始末をつけるべく手配を始めていた。
怪我人だけでも相当数になったことだろう。
本当に死人が出なかったのが幸いなほどの被害だった。
XANXUSはレヴィやマーモンに原因調査を指示し、綱吉の元へ駆けつけた。
「スクアーロ」
名前を呼ばれ、びくっとなってしまう。
気まずそうに顔を上げると、何故か目の前が真っ暗になった。
ばさり、とXANXUSのジャケットが落ちてきた。
「着ろ」
そう一言だけ告げて、綱吉を抱えあげた。
「ボス・・・オレぇ」
「話は後だ、綱吉が目覚めてから聞いてやる」
綱吉の治療が優先だと言い捨てて、XANXUSは本部に向かう車へ綱吉を抱えて乗り込んだ。
残されたのはボロボロのドレスだった布を纏ったオレとXANXUSのぬくもりと香りだった。
慌ただしく周囲が動いている中。
オレはただぼんやりと後片付け大変だろうなあなどとどうでもいい事を考えていた。
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