目を覚ますとベットの上にいた。
知らない部屋に知らない家具、見たことないものばかりだった。
ここはどこだろうと、辺りを見回すと見知った羽根飾りが数点置いてあった。
ということは。

ここはXANXUSの仮眠室、なのだろう。

「・・・なんでここに?」
ぼんやりした頭でなぜここにいるのかを考える。
あー、そういやXANXUSの執務室でぶっ倒れたんだったと思い出した。
サイズのせいもあり、決して軽いほうではないスクアーロをすぐ近くの仮眠室に投げ置いたのだろうと判断した。
そのまま床にほおっておいてくれればいいものを。
悲観的に考えていると後ろから声がした。


「あ、よかった!目、覚ましたんだねっ頭とか痛くない?」
「・・・綱・・・吉?」
「何か飲む?それとも食べるもの持ってこようか?」
どことなく話のかみ合わない綱吉がオレにまくし立てるように質問した。
オレはそれに質問で返してやる。
「・・・なんでてめえがここにいるんだよ・・・?」
「今、時間が空けられるのおれだけだったんだよね。それにさ。」

頬をちょいっと触りながら俯いて。
「この顔じゃ、今日の予定に参加できなかったんだよね。はは」
笑いながら離しやがった。


今日の綱吉の予定は、XANXUSと共に婚約の報告をしに同盟ファミリーの元を挨拶回りすることだったらしい。
二人の予定をすっかり狂わせちまった。
元々スケジュールが詰まりきっている二人にとって、なかなかそういう時間を取ることも大変だったろうに。
本当に、今のオレは最低だな。
苦笑するしかできることはなかった。



「悪かったな・・・傷。まだ痛むかあ?」
「ううん、もう平気。それよりスクアーロのほうが」
「オレはこんなん日常茶飯事だって知ってんだろうが、ボスに殴られることなんていつものことだからなあ。」
「っでも!」
「いいんだあ。」
これがオレとアイツとの関係なんだ。だから、オレはこれでいいんだ。
その言葉は声に出ることはなかった。
そのことを知ってか知らずか、それ以上は綱吉も傷に触れる話はしなかった。


「ん、とりあえずオレあ、部屋に戻るぜぇえ」
いつまでもこのベットを借りているわけにはいかなかった。
元からこの後の予定は休暇にするつもりだったのだから、いつまでもこの部屋にいることも綱吉と話をしてることもないのだから。
そう思って、身体を起こそうとするも力が全然入らなかった。
「・・・!?う゛お゛?」
「スクアーロ無理しないで今日はここで休みなよ。オレからXANXUSに言っておくから」
「ん・・なことしたらまた殴られっちまうだろうがああ!」
怒声を浴びせるつもりで言ったものの、やはりどことなく覇気がない声になってしまった。

「それは十代目の全権を持ってでも止めるよ。だからゆっくり休息を取ってください、ね!」
「・・・やっすいことに全権使いやがるんだな」
「きちんと働いてくれている部下に対して使うなら、安くなんかないんだよ?」
オレごときにそんなことしなくてもいいのに。
くだらねえことに全権使いやがって・・・と思ったが。
その、権利すら持たない自分には、出来るわけのない芸当だった。


綺麗で、強くて、人も動かせる。
何もかもかなわねえんだな、こいつには。
それがXANXUSの隣に立つ『女』としてふさわしいのだろう。

改めてこいつの『大きさ』を思い知らされている気がした。


「違うもんだな・・・・くそ」
聞こえないようにひとりごちた。
元から平等だなんて思っちゃいねえが、この差はもうどうあがいても埋めようがないだろうと思った。
オレもそうなれたんだろうか、考えても答えなど出ない。




「じゃあさ、お姫さんよぉ」
わざと皮肉った言いかたで煽るように綱吉を呼んだ。
「その全権、てのを使って山本の小僧呼ぶってのはできんのかよ?」
「へ?いや、そのくらいだったらすぐにでもできるけど」
「じゃああ呼んでくれやあ」

身体は動かない、さらに頭痛も腹痛もひどい状態だったので正直このまま眠ってしまいたいくらいだったが、
この部屋にいること自体がそれを引き起こしている原因だと思った。
タケシには悪いが、手合わせの約束を増やすことで利用させてもらうことにした。

「うん・・・あ、そっか。それ終わってからで良いよ。・・・うん。よろしくね」
オレにお願いされたとおりに綱吉はタケシに連絡を取ってくれていた。
ここにいない可能性もあったのだが、どうやら連絡がついたようでひとまず安心した。


「あと、15分くらいで来られると思うけど」
「おおそうかあぁ、手間かけさせたなあ゛」
「山本に運んでもらうの?」
「あぁ、そのつもりだあ。・・・どうした」
「そのくらいだったら、おれでも出来るよ。運ぼうか?」
「・・・遠慮させてもらうぜぇ。」

ぶすくれた顔をする綱吉だったが、運ぶのは絶対無理だと思った。



オレを運んだのはXANXUSだったんだろうか。
事実は知らないほうが良いかもしれない。


タケシが来るまでの約15分。
これほどまでに長く時間を感じたことはゆりかごのとき以来だろうか。
あっちは実際長かったのだが。

時間よ早く過ぎ去れ、そう願った。








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