「綱吉」
デザートを残すだけとなったテーブルにXANXUSが箱を出してきた。
それを綱吉に投げた。

「・・ん?」
「やる」
「開けていい?」
「ああ」

綱吉は受け取った箱を開けてみた。
中身は小さなネックレス、けして派手ではなく可愛らしいデザインのものだった。
「わあ・・・ありがとう、XANXUS。つけてもいい?」
「ああ、つけてやる。貸せ」
慣れた手つきでネックレスを受け取り、綱吉につけてくれた。

「・・・うれし・・・ありがとう、本当にありがとうXANXUS」
やばい、泣きそう。
綱吉は本当に嬉しかった。、でも・・・・。
XANXUSは満足した表情で笑っていた。
笑うほど、満足した顔になるほど、それだけ喜んでくれているはずなのに・・・。

その裏に以前見せたような困っている表情が隠れているのに気づいてしまった。


「・・・似合わない・・かな・・これも・・・」
「いや」
「ん・・でも無理に笑わなくてもいいよ、おれにはまだこういう綺麗なアクセサリーは早いんだよきっと。お子様だから」
自虐的にそう言ってしまった。

でも、せっかくつけてもらったネックレスのを外すのは嫌で。
とっぷの部分をぐっ、と手の中に包み込んだ。
泣きそう、さっきとは違った意味で泣きたかった。
――――困らせてしまうだけならつけなければよかった。


綱吉の手をく、と止めて、XANXUSは手を開かせた。
「バカか、首に傷できちまうだろうが、カス。手を離せ」
綱吉が思っていたよりも強くひっぱりすぎていたようで。
XANXUSは軽く跡がついてしまった首筋をなぞり、その赤くなった首に口づけた。

「!!」
突然の行為にびっくりして、綱吉はわたわたしてしまった。
「・・・な!にすんだよっ!!?」
「せっかく綺麗な肌、傷なんか作るんじゃねえ」
「そ・・・うじゃなくて!!」

近い位置にXANXUSの顔があり、それでなくてもXANXUSの行動に驚いていたせいで夜の控えめな光の中でも赤くなったのがわかるほどだった。
あせればあせるほど、言葉が出てこなくて余計に涙が出そうになって。
違うんだよ、泣くんじゃなくて伝えたいことがあるのに。

その泣きそうな綱吉をみて、XANXUSは余計に綱吉を可愛く感じた。
だが、自分が綱吉を泣かせてしまうのは不本意だった。

「・・・なぜ泣きそうな面しやがる、それじゃ気に入らなかったか?」

言葉を発しようとすると涙が先に出そうなほど溜まり切った綱吉は、首を大きく振って否定した。XANXUSから貰うものが気に入らないわけがない。
今なら、紙切れ一枚でも宝物にする自信があるくらい。

「・・傷、できちまったか。痛むのか?」
綱吉はそれも首を振って否定する。
出来た傷、それは心の傷だったから、痛むけど言える訳がない。

「じゃあどうした?てめえの泣きっ面なんか見たかねえ」
XANXUSの大きな手が綱吉の頬を撫で、頭を撫でた。
落ち着かせる方法も涙を止めてやる方法もわからないから。
XANXUSも必死で、綱吉をなだめようと試みた。

多分、優しく、そうだ優しくすればいいはずだ。

小さな綱吉を壊さないように、優しく優しく、撫でた。
だが、その優しくて温かな手のひらが気持ちよすぎて。
逆に切なくなってしまった綱吉は頑張って抑えていた涙がついに流れ出てしまった。

一度出てしまった涙はそう簡単に止められるわけもなく。
次々出てくる涙が頬を伝い落ちて、XANXUSの手も濡らしてしまった。


それでも、XANXUSは綱吉を撫でるのをやめなかった。

優しく、やさしくなでつづけた。







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