「あ・・・の・・」
「何だ」
「お茶です、お茶請けもドウゾ・・・」

無言のまま向かい合って座るXANXUSと綱吉。
ちょうど良く茶器を出していたので茶を出してみたのだが、綱吉はこの後、どうしていいのかわからなかった。
目の前のXANXUSはというと、綱吉の出した茶を飲んでいた。

「・・・あのさ」
「何だ」
思い切って綱吉は切り出した。

「今日の用件は何?急に来ることないんじゃないの?連絡なら通信だので取れるじゃん?」
「・・・てめえんとこの犬躾け直せ、ドカス。奴のせいでてめえに連絡つかねえ」
「は?獄寺クンのこと?なに、またおれへの連絡取り次がなかったの!?・・・っったくもぅ・・・」
「連絡つかねえから来たんじゃねえか」
「ホントスミマセン・・・」

自分の与り知らぬ所で連絡を途絶えさせていたなんてあってはならないことである。
例えそれが下らないと判断されていたことであっても、だ。

「今度から、おれんとこ直通の連絡手段を作っとくよ・・ってそのためにわざわざ!?」
「・・・それだけじゃねえ、カス」
様子から相当その事に対して怒りを覚えているようで、軽く綱吉を睨んできた。
さすがに数年修羅場を潜り抜けてきたとはいえ、XANXUSに睨まれる事に慣れた訳ではない綱吉は萎縮してしまう。
こういうところはまだダメツナなのだろう。

「てめえ、こっちに寄越すはずの仕事減らしてねえか?そっちが仕事握り始めてからカス共が欲求不満で暴れ始めやがって、余計な奴まで殺りやがる」
「う・・・・やっぱり減ってるのわかるんだ・・・」
「当たり前だ、ドカス」

何年奴らのボスやってると思ってやがんだ、と赤い目をギラギラさせて綱吉に言い放った。
文句をぶつけに来るとは思っていたが、まさかアポなし突然訪問だとは思ってなかった綱吉はしどろもどろに話し始めた。

「うー・・・と、あのね。」
「あ゛?」
「今までヴァリアーに行ってた依頼、とか仕事とか・・・大半が、うーんと・・殺さない、消さなくても済む、っていうか解決方法が別にある、ものばかりだった・・・ていうか」
「簡潔に話せ」
「んー、だから殺さなくて済むならそっちがいいなっていうか・・・うん」
「自己完結してんじゃねえ、カス」
「え?あ・・あゴメン」
かりかりとおでこを掻きながら言葉をまとめようと考えて。

「ヴァリアーには悪いけど、やっぱりおれが殺しの指示を出したくない。いくら悪い奴でも出来る限り殺さないで解決したいから、手を尽くしてるところなんだけど」
「っってこたあ、やっぱりてめえんとこで仕事止めてんじゃねえか。とっととこっちに回せ」
「それは無理だって!だってそっちに行ったら殺しの依頼になっちゃうもん」
綱吉にしてみれば、絶対にひけない部分だった。

だが、XANXUSにとってもひくことができないというのも事実。
「じゃあなぜてめえはヴァリアーを直属に置く選択をした?『殺し』たくねえなら、俺達こそ必要ねえだろうが」
「殺しはいらない、けど。おれ、ヴァリアーの皆は必要だよ。失いたくない」

「行ってることが矛盾してんじゃねえか」
「矛盾?してないよ?」
まだほんのり湯気の出ている茶を飲みながら、綱吉はそういった。
自信満々といった様子で。

「おれ、十代目としての考えはね、暗殺部隊としてのヴァリアーは解散してもいいと思っている。でも、ヴァリアーに属する皆は絶対に手放したくないんだ。」
のほほんとした表情で話してはいるが、結構深刻な話で。
「ただでさえヴァリアーの存続の危機だった、ってのはわかってるでしょ?」

存続の危機。

九代目、十代目の命を狙ったクーデターの当事者たちはボンゴレにおいて厄介者扱いで。
その殺傷能力は買われていたが、ボンゴレでまたクーデターを起こす可能性を示唆する者も少なからずいるわけであって。
全員まとめて消す、という声も上がっていた。

「同情か?いらねえぞ、そんなもん」
「違うよ、皆が大事だから行動に起こしただけ。」
そんな周りの声を打ち消し、ヴァリアー存続のために。
綱吉は、自分の配下としてヴァリアーを置くことを決めたのだ。

「あの狸じじいども納得させるの、だいぶかかったんだからね?」
最後は九代目の一押しで決まったものだったのだけれど。
ははは、とXANXUSの怒りを全て受けながすように綱吉は笑っていった。


「だから、仕事が少ないのは我慢してください。これ以上は増えません!あ、別の仕事だったらいくらでもあるんだけど・・・」
「何のための暗殺部隊だと思ってんだ、ドカス」
「ですよね・・・、期待してなかったけど」
予想通りの意見に少ししょんぼりした様子の綱吉。
「・・まあ納得いかなくても、こっちは曲げるつもりないからね」


目の前のお茶がなくなったので、入れ直すために席を立つ。
多分、XANXUSは納得いっていない。

だが、綱吉も皆を守るために十代目になる決心をしたのだから、ここで意見を譲っては意味がない。


手際よくおかわりのお茶を準備して、砂時計を置きなおす。
再びお茶が出来るまで、沈黙の時間が流れた。





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