綱吉が目を覚ますとベットの上にいた。

ベタすぎるよな、と思ったけど。
やっぱり隣にはXANXUSが寝ていた。
驚きはしたけど、でも悲鳴を上げるほどの事じゃないなと思った。

「頭いたい・・・」
久しぶりの宿酔い。
よく見ると、自分は下着のみを身につけていた。
多分、XANXUSが着ていたものを脱がせてくれたのだろう。
酔った自分をここまで連れてきてくれて、寝かせてくれたのだろう。


直感で。
XANXUSはそれ以上は『何もしなかった』と思った。


手が出せなかったじゃないな、きっと自分に魅力がなかったのだろう。
どう見ても、子供、な自分。
ちょっと、悲しかった。

起きる様子もないXANXUS、まだ日も昇って間もない時間だからだろうか。
気持ちよさそうに寝息をたてている。

顔を合わせづらい気がして。
顔を見たら泣いてしまいそうな気がして。
書き置きを残して先に帰ろう、そう決めた。



携帯を取り出して、獄寺に連絡を取った。
獄寺も山本も、リボーンでさえも何故か心配した声で話してきたのがおかしかった。
本当に、何も、なかったのにな。

バタバタと準備をする音がうるさいかなと心配する自分と。
その音で起きてくれないかなと思う自分がいて。


ああ、おれってXANXUSのこと好きだったのかななんて、今更自覚した。


プレゼントの髪飾りがすごく嬉しくて、少しでいいから褒めてほしかった。
ドレス、XANXUSの好みだって聞いた色にしたの気づいたかな。
靴だって、同じ。
全部見て、全部褒めてほしかったんだ。
それで、その暖かい手で。
――――おれのこと抱いて欲しかった。

でも、大人のXANXUSにはお子様なおれの事なんてなんとも思っていない。
それが昨日でよくわかった。

なんとも思っていないなら、下手に優しくしてほしくないのに・・・。

朝日のまぶしい天気のよい朝に、綱吉は『失恋』した。
それでも、XANXUSから貰った髪飾りはすごく大事にしたくて、ケースに入れてカバンの中に押し込んだ。
泣きそうな顔だったけど、それは朝日がまぶしいせい、だといいなと思った。








XANXUSが目を覚ますと、せわしなく動く綱吉がうっすら見えた。
急用でもできたのか、それとも右腕やら家庭教師やらにぐだぐだ言われたか。
下手すると両方かもしれんな。

話を聞こうと綱吉を見ると、今度は髪飾りを抱えて泣いていた。
昨日着けていた、XANXUSの贈った髪飾り。
元からそこにあったかのように、髪に自然になじんでいてよく似合っていた。
綺麗だった。
わざわざそれを着けてきてくれたことがただすごく嬉しかったのだ。

なぜ、泣く必要があるのだ。

そのまま、XANXUSは動けなかった。動いてはいけない気がして。
寝たふり、ではないがそのままベットの上で黙っていた。

綱吉は紙をてにして、XANXUSの元に来た。
枕元にその紙を置きベッドのほうを向き直して、XANXUSの額にキスをした。

「・・XANXUS・・・」

何か言おうとしたのか聞き取れなかったのか。
言葉になっていたのかもしれなかったが、XANXUSの耳には届かなかった。
泣きながら走り去る綱吉をただ呆然と見ているだけだった。


『XANXUSへ
昨日は本当に有難うございました。
酔った自分を世話してくれて、ベッドまで運んでくれて、ありがとう。
でも、完全に酔っていて憶えてないです。ごめんなさい。
これからも、よろしくお願いします。  綱吉』


ありがとう、と、ごめんなさい。
綱吉の口からよく出る言葉だ。
あいつらしい、と思った。



昨日、本当は綱吉を抱いてしまいたかった。
もし手を出してしまったら。
こいつの何もかもが壊れてしまう気がしてしまって。
結局何も出来なかった、らしくない話だった。

綱吉のことに関しては迷いがでてしまう。
あいつは十代目、俺は犯罪者。
綱吉を苦しめるようなら、俺が身をひくべきなのだろう。
それが、あいつのための選択。

それでも、綱吉の涙は見たくない。
朝のぬくもりに包まれたベッドの中でXANXUSは綱吉の温もりの残るシーツを抱きしめた。





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