XANXUSに会ってしまった。
その興奮が治まらない綱吉は、仕事をうまく進められずにいた。
同じく手伝っていた獄寺にも、「俺がやりますから」と仕事を取り上げられ。
別の仕事から帰ってきた家庭教師にも散々にしかられ。
とっとと行っちまえ、と部屋から追い出されてしまった。
情けない、と思う反面これ幸いと思う自分もいて。
XANXUSに会うのも仕事のうち、と遅刻しないように準備を始めることにした。
ただ、予想していたよりも家庭教師の説教時間が長かったらしく、早めと思っていた準備もあたふたしているうちに時間ぎりぎりまでかかってしまった。
やばい、遅刻する。
バタバタと走って移動をする。
呼び出したのはコッチなのだから、待たせるなんてしてはいけない。
ヒールで走るなんて経験がないので、速度が全然でないけれども。
それでも急がないと・・・。
待ち合わせは本部のヴァリアーがいつも使用する出入り口。
それは綱吉のいた部屋から真逆に位置する場所にあった。
「遅え」
待たされることに苛立ちを覚えていたXANXUSは、走ってきた綱吉に一言だけそう言った。
「・・・はあ、ごっ、ごめ・・っな・・っさい・・・はあっ」
せっかく綺麗にしてもらった髪も顔も、走ってきたせいですでにぐちゃぐちゃだった。
心なしか足も少し痛む気がした。
こんなところでダメツナを発揮しなくても・・・と思ったが後の祭りだ。
あがりっぱなしで整わない息では、何も言うことができなかった。
XANXUSはそんな綱吉が心配になった。
「ルッスーリア」
「はい?ボス、何かしらあ?」
「綱吉の髪、と服。直してやれ」
「お安い御用だわあ、ツナちゃん、ちょぉっとごめんなさいねぇ」
見送りに着ていたルッスーリアが綱吉の髪を整え、服も直してあげた。
自分でも出来るのだが、ここには鏡がないので自分の姿が見えない。
器用で自分よりも綺麗にできるであろうルッスーリアに全部お願いしたほうが得策だと、綱吉は黙って好意を受けた。
「ツナちゃん」
「・・・何?」
ちょっと怒った顔でこちらを向くルッスーリアにどきっとした。
「ドレスを着た女性はこーんな乱れるような激しい動作はしてはいけないのよ、わかったわね!」「・・ぅ・・・はい、ありがとうルッスーリア」
「楽しんでいらっしゃいね」
そう言って、最後に髪飾りを付け直してくれた。
綱吉は再びXANXUSのほうを向きなおし、深呼吸をした。
「・・・お待たせしました」
「行くぞ」
そう言ってXANXUSは、綱吉をひょいと抱えあげた。
「・・・・!?」
突然の出来事にせっかく落ち着いたと思った心臓がまたバクバクと鳴り出して。
呼吸がまた速くなって。
「・・・え、あっの、XANXUS?おっおれ」
「足。・・・また同じところに傷作りやがって、このカス」
「やっち、ちがっ!」
抱き上げられた腕の中で綱吉は、自分の体温が相手のそれ以上に熱くなるのがわかった。
否定しているものの、誰が見ても明白なほどの足の傷がそこにあっては信じてもらえまい。
それでも、恥ずかしくて身体をもぞもぞと動かそうとしたが、がっちりと抱きとめられていてそれもできなかった。
結局そのまま車に乗せられて、レストランまで連れて行かれたのだった。
車の中では薬箱を使って、XANXUSが足の手当てをしてくれて。
自分でやるといったのにもかかわらず、XANXUSはその言葉を聞くつもりはなく、勝手に傷の治療を始めていた。
「てめえはもう着飾った格好しねえほうがいいんじゃねえか」
「・・・」
綱吉も少しだけそう思っていた。
でも、それを相手に言われてしまうとショックが大きかった。
似合う、とまでは言ってくれなくても少しくらいは褒めてほしかったな。
褒められない事態にしてしまったのは自分、なのだけれども。
思っていたよりも器用で、丁寧に治療された足を見て。
いよいよ自分がなさけなくなった。
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