ボンゴレ本部内に作られた飛行場へと到着した三人は、すぐ綱吉の待つ医務室へと足を進めた。
離れに作られている飛行場から約五分。
医務室の扉の前でXANXUSは立ち止まった。

「てめえら、先に行け」
「はあ゛?ボスが先に行かねえでどうすんだよ」
「いいから先に報告終わらせてきやがれ、ドカス共が」

そう言って、スクアーロと山本を医務室の中へと叩き込んだ。
ドカ、と開いた扉の先で、綱吉はベッドの上に体を起こして待っていた。

「あ、お帰りなさい、山本、スクアーロ」
「た、ただいまなのな」
「帰ったぜえ゛」

思っていたよりも顔色もよく、普段どおりの綱吉に戻ったように見える。

「長旅お疲れ様、香港は楽しかった?」
「とんぼ返りじゃ観光する暇もなかったっての、まあ、ある意味楽しかったのな」
「そっか。じゃ報告書は明日でかまわないから、今日はゆっくり休んでください」
「了解。ところでツナ・・・体調は?」

もう見た目はいつもどおり、だが言葉でも確認を取りたくて山本は綱吉に聞いた。

「もう全然大丈夫、仕事に戻ってもいいのにシャマルにも獄寺くんにも一週間は休めって言われてさあ、暇してるところだよ」
「そうなのな!」
「でも、もう三日したら仕事に戻るつもりだから、それまでは山本にも頑張ってもらうからね」
「う゛、デスクワークってことなのな?」
「もちろん!」

綱吉の分まで、となると元々机での作業が苦手な山本には酷なものである。
そして、綱吉の笑顔があまりにもキラキラ輝いているところを見ると相当量用意されていると見た。

「う゛お゛おい・・それヴァリアーも、か?」
「ううん、ヴァリアーは逆。こっちから仕事出せないからいっそ全員休暇にしてもらったよ」
「休暇だあ!?」
「上司がいない状態であまり動かしたくないんだよね」
「・・・てこたあ゛」
「スクアーロはしばらくお休み、何なら旅行に行ってきてもいいよ」

暗殺部隊の戦闘好きなメンバーから仕事を奪って、しかも旅行へ行けと。
特上の笑顔つきで言われたものだから、スクアーロも一瞬固まってしまった。
どうやら綱吉のために、とXANXUSを連れ戻しに行ったことが綱吉の逆鱗に触れてしまっていたようだ。
笑顔は笑顔でも魔王の微笑みであったようだ。
一度この状態になった綱吉に逆らおうものなら、自ら命を落としに行くようなものだ。

「ハハ、ハハハ」
「う゛あ゛・・・」

山本とスクアーロはもっとも自分の苦手なものを突きつけられ、乾いた笑いをかえすことしかできなかった。
他の守護者もヴァリアーも同様の状態に晒されているとみた。
残されたメンバーのことを考えると心から合掌した。

「あ、それと山本。よければ獄寺くんにお茶入れてあげてくれるかな?俺の分まで働き詰めなんだ」
「はは、了解。じゃ、俺そっちに行くのな」
「うん、スクアーロも自室に戻っていいよ?」
「あ、ああそうすらあ・・・ちゃんと休めよお゛」
「判ってるってば、もう」

扉の影で佇む亜を横目でちらり見ながら、山本は獄寺の元へ向かった。
スクアーロは。

「ボス・・・」
「いい、さがれカス」

スクアーロのほうも見ずに下がる事を命ずる上司に逆らうことなく、自室へと戻ることにした。
下手に邪魔するほうが恐ろしい目に遭うだろう。
人気の少ない廊下を久しぶりの休息を取るためにゆっくりと歩き出した。

「がんばれよお、ボスさんよお゛」

スクアーロのつぶやきはXANXUSには届いただろうか。
届いても届かなくてもいい、次に二人に会った時には二人とも笑っていてくれることを願うスクアーロだった。






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