次の日。
昼に近い日差しがまぶしくて、海の近くだから気持ちよい波の音が聞こえる。
ふわふわしたタオルケットと、目の前には傷だらけ肌が見えた。
まだ少し肌寒く感じる季節だからこそ、人肌が暖かかった。
ぼんやりと目を開いた。
身体はまだ動かしたくないと訴えるようにギシギシ言っていた。
「起きたか」
先に目を覚ましていた男が綱吉に声をかけた。
「ん・・・XANXUS、おはよう。何時?」
「11時過ぎたくらいか、まだ眠るか、ベッドまで運んでやる」「まだ眠い・・・ってあれ何でおれ裸で寝てんの?」
綱吉は驚いた表情で周りを見渡した。
「・・XANXUS、この別荘、こんなに壊れてなかったよね・・・ははは」
昨日XANXUSと一緒に食事をし酒を飲んだその場所は、あちこちの家具や壁が壊れている上に酒瓶やら食器類もあちこちに飛び散っていた。
明らかに誰かが暴れた後の残るこの部屋のことと、
自分の昨日の夜の記憶があまりないところを総合すると・・・。
「てめえは・・昨日の夜のこと覚えてねえのか!?」
「あ・・あはははは・・・」
乾いた笑いしか出てこなかった。
XANXUSの呆れ顔がしみるようだ。
「・・また何かやっちゃった・・のね・・ははは」
綱吉の頭の中で心当たりを探る。
いくつか思い当たるうちの、多分これだ、というものがあるのだが。
「また?・・心当たりがあるんだな?」
「う・・はい、ごめんなさい」
「・・説明しろ、カス」
綱吉は多分これ、と思い当たる自分の失態の原因を話し始めた。
「えっと・・・大元の原因は気づいていると思うけどこれ、ね」
そう言って酒瓶を一つひょいと持ち上げた。
「つったって、以前飲んだときは何ともなかったじゃねえか、昨日は異常だったぞ」
「異常・・か・・・ははは、実はその状況になるには条件があって。大体体調不良のとき、睡眠不足とか風邪ひいたときとかにアルコール摂取すると起こるみたい」
綱吉は自分が休みをもぎ取るために仕事のスケジュールを前倒しして詰め込めるだけ詰め込んでこなした。
だから、その分一日の睡眠時間も削られていて。
綱吉本人としては体調万全のつもりで望んだ旅行だったのだが、身体は思っていたよりも疲労が蓄積していたようだ。
「人に抱きついたりして炎・・ていうか生命力みたいなのかな、吸い取って自分の力にしちゃうんだよね。零地点突破・改に近い作用を起こすんだけど」
「それでアレだけ炎が上がりやがったんだな」
「ごめん・・XANXUSの、取り込んじゃったんでしょ?」
「ああ、そりゃもう気持ちよさそーに思う存分持っていったぞ」
「・・・その後、大暴れだった・・よね・・?」
「まあ、ある意味、な」
「本当にごめんなさい・・前にもボンゴレ内でリボーンに無理矢理飲まされて日本のアジト地下数階分打ち抜くほど暴れたことがあって・・・今回はそれほどじゃなくてよかったけど・・」
その事実を聞いてXANXUSは目を見開いた。
「・・それは本当のことか・・?」
「うん、守護者総動員するほどの暴れっぷりで」
「てめえ!!他の奴等とやりやがったのか!?」
「は・・?やる・・?」
綱吉は、ヤル、の意味を把握できずポカンとしてしまった。
それはどのやるですか、殺す・・じゃないな、じゃあどれだ?
突然の言葉にあちらこちら考えを飛ばしてみたが思いつかず。
そうしているうちにXANXUSが痺れを切らして言い放った。
「あの野郎共とSEXしたかって聞いてんだ!!」
「え・・ええええ!?何!?どうしてそんな話になるの!?するわけないじゃんかぁ!!!」
ぶんぶんと両手を大きく振って否定する綱吉にXANXUSは言葉を続けた。
「じゃあてめえは昨日あれだけ求めてきたっつーのは何だったんだ!?冗談か!?あ゛!!?」
「ももも求めてっって!?うえ!?な・・何それ、そうなの!?物壊したりとか投げつけたりじゃなくて!?」
「あ゛!?腰振って『欲しい』っつったのてめえだろ!?」
「え!!?なっなああ!?・・そういやXANXUS怪我してないし・・あれ!?」
「・・・話食い違ってねえか?」
「・・微妙に・・ね・・」
二人ともお互いの話が上手く噛み合っていないのを不思議に思い。
XANXUSが先に、昨日の綱吉が『した』行動を事細かに説明した。
それはもう耳まで真っ赤になるほどの自分の痴態に綱吉は耳を塞ぎたくなるほどの事で。
(塞ごうとしたが、XANXUSに腕を押さえられてしまったのだが)
やはり自分が以前に起こした暴走とは違っていることがよくわかった。
「い・・・今までそんな事なかったのに!?どうして・・!?」
「俺にわかるかよ・・カス。昨日のてめえがいい感じに出来上がってたっつーのは事実だからな」
「・・・今までは、ただ暴れるだけ、だったの・・・そんなことしたことないんだって・・・」
もし綱吉が機械であれば、プシューっと音を立てて煙を上げていたに違いない。
自分が予想だにしなかった痴態に加えて、異常なまでの炎を喰った行動。
考えがまとまらなくてぐるぐる目が回る。
混乱、した。
XANXUSは大きな手のひらで綱吉の目を塞いだ。
「馬鹿野郎、酒がやっと抜けたんだ、無理もさせた。今は考えねえで休め」
「う・・うん」
「原因わかんねえなら、ボンゴレの研究班にでも依頼しろ。何か糸口くらいはつかめるんじゃねえか」
「・・そっか」
「それと、俺以外の前でそういった真似するんじゃねえ、ドカス」
「はい・・ごめんなさい・・・」
未だぐるぐるが後を引いている綱吉を抱えなおして寝室へ向かう。
「・・・XANXUS、まだ眠るの?」
「ああ、一晩中てめえに付き合ってた御蔭でくたくただ」
「ん、じゃあその分抱っこしててあげる」
「はっ、ガキみてえじゃねか」
「いいじゃん、おれがくっ付いてたいんだもん」
「昨日みてえに吸い取るんじゃねえぞ」
「ん、もう平気だって、だからゆっくり眠って?」
二人は昨日使うことのなかったベッドへと潜り込んだ。
少し冷たく感じるシーツと腕の温もり。
いつもの忙しい日々から離れた二人へ暖かい昼前の光が差し込んでいた。
このとき、ボンゴレIN日本のアジトでは。
「じゅうだいめぇ・・・どこ行ったんですかあ・・・」
「馬鹿生徒め、ねっちょりお仕置きだな」
「面白いことしてくれるじゃない、この僕を丸無視して出かけるだなんて」
などという全くお互いの言葉を無視したボンゴレ十代目捕獲計画会議が繰り広げられていた。
連絡の一つもいれずに失踪するボスはどの世界でも許されるものではない。
片やお仕置きを考え、片や涙目で現実逃避したりといつも通り日本のアジトは大賑わいであった。
ドンナ・ボンゴレ捕獲まであと48時間。
END
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