どのくらい時間が経っただろうか。
多少、綱吉の呼吸が落ち着いてきたようだった。
何度も暴れだしそうだったが、綱吉自身も必死で抑えようとしたようで炎を撒き散らす程度で済んだ。
いっそ全力で暴れさせるほうが良かったかも知れない。
その暴走を受け止めるだけの力が残ってなかった自分を呪った。情けねえ。
今ここに敵が攻め込んできたら二人まとめてやられっちまうだろう。
二人だけ、が仇になった。
綱吉の身体を抱きしめていて判ったこと。
少しずつだが発散か消化できているようで落ち着いてきていることと。
この暴走で、綱吉が欲しているものが性的なものだということ。
無意識だろう、腰を擦り付けてくる行為や最中のような息遣い。
なかなかお目にかかれるものではない綱吉の誘うような仕草。
欲しているものと身体とのバランスがちぐはぐなせいで、外側への炎の放出が大きくなったと推測できる。
「・・はぁ・・・ざ・・んざ・・・す・・・」
「・・どうした?・・つらいか?」
「・・・・ごめ・・・ね・・・」
「余計なこと考えるな、てめえはその炎何とかすることだけ考えろ」
「・・・あり・・・が・・・と・・・」
やっと絞り出した声で綱吉が言った言葉は謝罪と感謝。
身体もまだ熱っぽく、自分のことですらままならない状態だというのに。
「ほんと・・・てめえは馬鹿だよな・・・」
炎の放出が治まってきた。
現在いるリビングがあちこち欠けていたり穴が開いていたりで、それだけ多くの炎を放出したということがわかる。
綱吉の目に見える炎量が減ったということは、XANXUSから奪った分の炎を放出し終わったということだろう。
それでもまだ燻ってる分は自分の体内から生成したもののようだ。
相当疲労していることは顔色からもわかる。
そうでなくても、日頃の疲れが溜まっているであろう綱吉、だ。
出来る事ならこのまま休ませてしまいたい。
「おい・・・綱吉?」
「・・・」
ゆっくりと綱吉がこちらを向く。
その、疲れきった綱吉から発せられた言葉はあまりに意外な言葉だった。
「ざ・・ざす・・・した・・い・・の・・・」
振り絞るように発した言葉で綱吉が求めたのは、欲。
だが、今の状態でそれを受け入れられないXANXUSは。
「・・それはだめだ・・また同じ状態になっちまうだろうが、カス」
目を見て、ゆっくりそう伝えた。
それでも綱吉は首を振って。
「や・・したい・・・」
炎が治まってきた分、体に残ってしまった疼きを抑制できなくなっていた。
熱のせいか涙で潤んだ目に真っ赤な頬、ときおり腰を擦るように動かして。
身体の辛さから上がってしまっている息。
XANXUSの肩に腕をまわし、辛そうに身体を引き寄せてくる。
先ほどまでとなんら替わらないようだが、異常なまでにエロく感じるのは先ほどの言葉のせいだろうか。
小刻みに震える身体を両腕で抱きかかえながら、XANXUSは綱吉の背中を撫でた。
「綱吉」
「・・や・・・やだ・・・」
「綱吉、俺だっててめえを抱きてえ。だが、また炎を出して暴発したら辛いのはてめえなんだ、だから無茶すんじゃねえ、カス」
「・・・だ・・・て・・」
原因が何かもわからない今、無理させるわけにはいくまい。
XANXUSだってこんな据え膳状態の綱吉に手を出してはいけない、だなんてつらすぎるのだ。
合える回数自体少ない上に、これまで抱けた回数は片手に足りてしまうほど少ないのだ。
この休みにこそ存分に、などと邪な考えでいた矢先のお預け、もともと丈夫ではないXANXUSの理性は崩壊寸前だったのだ。
「ざ・・ざす・・・」
綱吉の熱はおさまるどころか、余計に酷くなっているようだ。経験不足の綱吉には、この身体の熱を自分で処理する方法がわからない。
感覚はXANXUSに抱かれているときのようで、ただそれがいつものそれよりも奥深いところから湧き上がってきて、尽きることのない様子なのだ。
XANXUSが欲しい。
めちゃくちゃに抱いて欲しい。
この疼きから解放して欲しい。
「ね・・ざ・・んざ・・す・・ほし・・い・・・ちょうだ・・い?」
炎を取られきって疲労したせいもあって理性を断ち切ることが出来ず。
泣きそうな綱吉の目に訴えられたXANXUSはそこであえなく陥落した。
好きな女にそこまでされて落ちないほど、満たされてきっている訳ではないのだ。
二つの影が重なって、まだ長く続く熱い夜が始まった。
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