『それで、何かわかったのか?』
「うん、一応はね」
それぞれの『家』へと戻った(連れ戻されたが正しいかもしれない)二人が約一ヵ月ぶりに連絡を取り合った。
というのも綱吉側の人間が皆揃いも揃ってボスの失踪の件で心配性モードになってしまい、風呂もトイレも誰かがついてくる事態となっていたからである。
「検査はそんなにかからなかったけど・・あ、XANXUSも協力してくれたんだよね?」
『ああ、少しだがな』
「その結果が一番顕著に出てる。やっぱり予想通り炎の属性の違いだったよ」
『やはりか』
「他の属性の炎だと単なる暴走になるだけだけど、同属のものだと悪酔いするみたいなんだ」
綱吉が体調不良のときにアルコールを摂取すると周りの人間から炎の力を吸い取ることについてボンゴレ研究班に依頼してみたところ。
彼らの研究結果では、体調を回復させるためにドンナが無意識に起こしている作用だ、ということだ。
そしてここからが重要で。
大空属性の彼女は他の属性の炎であればそのまま吸収できるのだが、同属の炎では吸収しきれずに身体の異変を起こしてしまったというのだ。
相手の炎の大きさにもよるのだろうが、XANXUSのそれがあまりにも強大すぎたというのがわかる。
「XANXUSとおれの炎の相性が良過ぎるみたいよ・・物が違うのにね」
『そりゃ相性いいに決まってんだろ、身体もそうだしな」
「・・・!?!?そそそそうなのかな・・!?!」
恥ずかしがる声を聞けて嬉しそうに笑うXANXUSの声が聞こえた。『ほんっとにてめえはからかい甲斐があるな』
「っ・・と、ともかく!お酒は控えるように、てことだからXANXUSも覚えておいてよね」
『そうか、まあ一応覚えといてやる。またてめえが乱れ狂う姿っつーのも見てえけどな』
「っ!!」
とうとう綱吉が恥ずかしさで黙ってしまった。
これだから弄り甲斐があるんだよな。
そういうところも可愛くてたまらねえ、とXANXUSはいつも思っている。
早くイタリアに来ちまえばいいのに、と願っているのもいつものことだ。
一方綱吉は目の前にXANXUSがいたら絶対に睨みつけていたであろう。
そんなことしても、XANXUSはおろか、綱吉の周りにいる人間の大抵は逆効果だということに綱吉は気づいていなかったが。
「十代目ぇ〜、どこですかあ!?」
廊下のほうから獄寺の声が聞こえる。
「うわ、もう探しに来たか・・」
『だからてめえんとこの犬、躾け直せって何度も言ってんだろうが、カス』
「うーだって何回言っても無理、正直困ってる。どいつもこいつも聞く耳持たなくてさ」
まあ、そろそろ行こうかな、と隠れていた倉庫の奥の箱から重い腰を上げた。
「あ、そういえば!」
綱吉は手元の資料を捲り、もう一枚の資料に目を通した。
「初代のドン・ボンゴレも同じ症状起こしたことがあるんだって、初代の大暴走って資料も添付されてたんだけど、それにすごくそっくりなことが書いてあって」
『初代・・が?』
「二代目の炎を食い尽くしてボンゴレ本部半壊にしたってやつなんだけど・・・笑えない冗談だよね」
『・・・傑作じゃねえか、てめえそっくりで』
「そっくり・・だよね・・ははは」
綱吉と初代。
ひいひいひいおじいちゃんにあたるらしいその人は見た目がすごく似ているらしいが、この資料を見ると中身も相当似通っていると見た。
余計なところまで引き継いでしまっているようである。
「もしかしたら、対処方法なんかも残ってるかもしれないから、本部の方の資料室も探してもらってるんだけど無理かな・・て思ってるよ。初代の情報はただでさえ少ないもんね」
諦めきっている綱吉に、XANXUSがにやと笑って一つ思いついたことを伝える。
『多分だが、じじいの資料室に初代の文献があるはずだ。見つけたら即送ってやるよ』
「ほんと!?」
『ああ、その代わり見つけたら褒美よこせよ』
「何?仕事は残ってないからね』
『また・・てめえから誘ってもらうっつーことでいいぜ?』
「誘う・・っってそれは無理だってええええ!!!」
「十代目!こちらですか!?」
「あ・・しまったあ・・・」
大声を出してしまったせいで獄寺に見つかってしまったようで。
倉庫の扉が大きく開かれて、光が入ってくるのが見えた。
『おい、褒美楽しみにしてる、綱吉、愛してるぜ』
そう言っ一方的にXANXUSは通信を切ってしまった。
綱吉は深ーいため息をついて獄寺を睨みつけてみた。
それをさらりとかわして、獄寺は極上の笑みで綱吉に話しかけてくる。
幾度となくその目を向けられている獄寺にとってはほとんど効果のないものであったのだ。
「十代目、まだお仕事が残ってますからね!今日こそ終わらせましょうね」
その罪のない笑顔に毎度綱吉は騙されてしまっているのだが。
「うん、じゃあがんばろっかあ・・・ははは」
ドンナ・ボンゴレの忙しい一日はまだ終わらないのだった。
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