太陽が傾きかけた時刻、ようやくXANXUSと綱吉は自宅へと戻ってきた。
もっと早く帰るつもりがずるずると延びに延びて夕焼けが見える頃になってしまったのだ。
お互い離れがたいと思うのは一緒で。事あるごとにくっついたり、キスをしたり。
まさに熱々のバカップルの典型的な構図である。
その熱が冷めきらぬまま自宅の扉を開けるべく鍵を取り出すと鍵穴に刺さるよりも先に扉が勝手に開いたのだ。
「あれ…ひっ!?」
手を繋いだままの綱吉とXANXUSの目に飛び込んできたのは真っ赤な顔をした綱吉の父、家光の怒りに満ちた顔であった。
何処で用意したのか鎧兜に刀が二本。頭や首にまで包帯を巻いた状態の重病人がする行動ではない。
「XANXUS……てめえ」
「何だ、ドカスが。俺はきっちり保護者の許可を取ってからこいつを連れ回したまでだが」
「ふざけんなよ、ツナの保護者はこの俺だ!!」
許可した覚えはない、と目を血走らせた家光が叫ぶが、XANXUSは何もなかったかのように其れをかわし、中へと入っていこうとする。
もちろん、家光からの口撃から綱吉を守るように自分の背後へと隠しながら、だ。
その行動も気に入らないらしく、家光が思い切り右腕を振り上げ、XANXUSの脳天に直撃させるべく振り降ろした。
ガゴン。
刀が当たったのは玄関の扉、とっさにXANXUSが引いたおかげで誰も怪我はなさそうだ。ただし扉はもう使い物にならないだろう。
「危ねえな、クソが。綱吉に当たるだろうが」
「てめえがよけなきゃ当たらないだろ!」
ギラギラした目をぶつけあいながら、ギャアギャアと言葉を吐き出しあう二人を見つめながら綱吉は家の中にいる母に助けを求めるべく、大声で名を呼んだ。
「かあさーん!! 父さんがー!」
帰って来たことに気付いた奈々がぱたぱたとスリッパを鳴らし、玄関へと走ってくる。
あ、母さんにしては早い。
綱吉がそう思っていると、奈々はサンダルに履き換え、外にまで出てきた。
「家光さん?」
「……奈々」
笑ってはいるが、母から出ているオーラは明らかに怒りだ。めったに怒ることのない母がこんなオーラを出すなんて父さん何をしたんだ! と叫びたくなった綱吉だったが、下手にここで口出ししては巻き込まれる、と片手で口を塞ぎ、声を止めた。
「お医者様に絶対安静の約束で退院できたのに、起きてちゃダメでしょ?」
「は、はい」
これは自分達が来る前に何かあったな。
そう思わざるを得ない空気がそこにあった。すごすごと奥へと戻っていく父の足取りは重い、怪我のせいでも鎧のせいでも、母の怒りのオーラのせいでもあるだろう。
綱吉は全くもって同情する気にはなれなかった。
「お帰りなさい」
綱吉の耳に母の温かい声が届く。
そうなのだ、綱吉の聴力が少しずつ回復してきていたのだ。
近くのある程度の音であれば聞き取れるぐらいになったのだ。
「ただいま、母さん」
精神的なものも大きいと言われていたが、XANXUSの腕の中でゆっくりと一晩過ごしたことが大きな安心材料となったようである。
『不安』は思っていたよりも綱吉の中で大きかったようだ。
「XANXUSくんも上がって、お茶入れるわね」
にこり、と笑う母にXANXUSも軽く会釈して中へと入っていく。後ろから付いていった綱吉に母が軽く耳打ちをした。
「お泊り、楽しかった?」
他意はないのだろうが、昨日の今日でそれを聞かれるとどきりとしてしまう。
綱吉は少し照れながらもうん、と答えた。奈々はそれにまた可愛らしく微笑んでよかったね、と言ってくれたのだ。
ほお、と一息ついて綱吉は母の後を追った。
「出来れば次は二人とも万全な時に会いたいな」
綱吉はお茶を運びながらそう呟いた。
次こそ、絶対に。
その言葉がXANXUSに届いたのか、綱吉を見て不敵な笑みを浮かべていた。
楽しみだな、と口が動いたのは気のせいではないだろう。
(END)
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