ジャンニーニに頼んでいた通信機が出来上がった。
回線は本部の九代目直通のものと、ヴァリアーのXANXUS直通のもの、だけ。
もちろん綱吉専用で、本人にしか使えないようにプログラムされている。

ニコニコとその通信機を手に取り、綱吉は連絡を始めた。
もちろん相手はXANXUS。
XANXUSの元にも同様のものを届けさせたので、そろそろ手元に届いた頃だろう。

仕事入ってなかったかな、今こっちが23時過ぎたからあっちは日中だよね。
色々、考えていると。
コール音が切れて。


「綱吉・・か?」
「うん・・・XANXUS、やっと連絡取れるね・・よかった」
「ああ、これでやっとお前の声が聞ける」
「・・うん」

連絡取れた途端、言われる言葉に照れてしまう。
これだから、イタリアの男は・・・。

「てめえがとっととこっちに着やがればこんな苦労しなくても済むんだがな」
「それはちょっとおれも考えてた、イタリア行ったほうがいいのかなあ」
「来りゃいいじゃねえか、何を悩むことがある?」
「・・・守護者とアルコバレーノが・・・ちょっとね・・ははは・・」

一度計画を止めてみたものの、話を聞くような輩はおらず。
幾度となく、XANXUS殲滅計画を立てては綱吉から説教を食らっていたのだった。

「やはりか・・カス共が。奴等こちらに着て屋敷破壊してったぞ、請求書そっち送りでいいか」
「え!?・・・またか・・もう色々やろうとしてて止めるの必死なんだ」
請求書・・。
このところ、日本のアジトですら何かと暴発事件を起こしてあちこち直すはめになっているのに。
綱吉にはちょっとつらい話であった。

「なおさら早くこっちに来たほうがいいんじゃねえか、てめえの身を守る環境作りやすいだろ」
「んー、そうだよなあ、おれもXANXUSの傍にいられるからそっちの方がいいしなあ」
やっぱりイタリアかあ、と綱吉がぶつぶつ計画を考えていると。

「・・・わかったらとっとと嫁に来い、このカス」
「うん・・・って嫁!??!嫁って何よっえっ・・!??」

何の前触れもなくプロポーズ。
XANXUSらしいといえばらしいのだけれども。
びっくりして返す言葉がめちゃくちゃになってしまって。

「イタリア来るっつーのはそういう意味じゃねえのか?」
「え・・ってあの・・・そこまで、考えて、なかった、ていうか・・・」
「・・・そうか・・」
「・・・う・・」

あからさまにテンションが落ちてしまったXANXUSに綱吉は困った。
どうしよう、どうしよう。
焦って言葉がまとまらなくて、あー、とかうーとか、しか出てこなくて。
「綱吉?」
「・・・何?」
「気にするな、待ってるから」
「う・・ん」

こんな些細なことでも自分のガキくささが出てしまって。
大人になりきれない自分が悔しくて。

「綱吉?」
「ありがとう、XANXUS」
「・・、愛してる綱吉」
「おれもXANXUSのこと、愛してるよ」


通信機の奥から、「ボースー」と呼ぶ声が聞こえた。
今日は『仕事』が入っていたようで。
「・・・行ってくる」
「うん、気をつけて。行ってらっしゃい」
そう言って通信が切れた。

綱吉の顔がまた真っ赤に染まり切ってしまっていて。
この通信機が顔の見えないタイプで作ってよかった、本当によかったと思った。


「お嫁さん・・か」


ホントはちょっぴりだけ憧れていた。
そうなればいいな、位の感覚で考えていたことだったので。
まさかXANXUSの口からそういう言葉が出るとは思ってなかったから、嬉しくなってしまって。

「次に会うとき・・・行ってみようかな、その話」
通信機を元に戻しながらそんなことを一人ごちた。





この三日後に。
XANXUSが花束を抱えて、綱吉の元へプロポーズしに来るのはまた別のお話で。


end.



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