REMEMBERー全てが記念で大事な思い出
「は・・あ、はあ」
「無理すんな、しばらくこのままでいろ」
「うん、そうしたいな」
綱吉はXANXUSの上に転がり、頭を胸に預けた。荒くなった呼吸を整えながら、ボンヤリとした意識の中でXANXUSの心臓の音を耳に当てていた。
綱吉に負けず劣らずでXANXUSの心臓も忙しなく動いて大きな音を響かせていた。
とくん、とくん。
XANXUSが綱吉が落ち着けるようによゆっくりと背を撫でてやると、嬉しそうにくすくすと笑う声が上がった。
「なんか、初めてのときみたい」
「ああ、そうだな」
「覚えてる? ほんっとに痛くて泣き喚いておれを一晩中慰めて背中を撫でてくれていたこと」
「当り前だ・・罪悪感に苛まれたのはあれが初めてだったからな」
綱吉からXANXUSの顔は見えない。
けれども声のトーンが落ちたことから良い思い出に思っていないのは明らかだった。
「いいって言ったの、おれだしね」
もう一度くすくすと綱吉は笑った。
お互い忘れることはないだろう。あの体験は本当に酷かったのだ。
XANXUSと綱吉が初めて身体を繋げたのは、高校に進学しようとする春のこと。
イタリアへと遊びに行った綱吉は他の皆とは別行動でXANXUSと丸々二日間二人きりで過ごす時間が取れ、その夜に事に及んだのだが。
慣れているとはいえ処女の扱いなど考えたこともないXANXUSと、高校生になるとは思えないほどの知識の乏しさを誇る綱吉である。さらに言うならば、規格外のナニのでかさを誇るXANXUSと格好次第では小学生にすら見えるほどの小さな身体をもつ綱吉の二人のことである。
大きいと小さい、それも規格外に大きいと小さいなのだ。並であれば良かったのだろうがそこに文句は言えるはずもなく。
いざ、というときになって綱吉は、痛くて堪らなくなってぼろっぼろと涙を流し、声をあげて無理だと訴えたのだ。
いくら大人とはいえども、理性の切れかけたXANXUSには酷すぎる訴えだったが、その理性をかき集めて瘤結びにし、一晩中泣き続ける綱吉をぽんぽんと撫で続けたのだ。
「酷かったね、おれ」
「まったくだな」
「あんな痛いと思わなかったもん・・・あれならXANXUSの本気の拳一発受けた方がマシかもなあ」
「・・・そうか」
心なしか手に力が入っているXANXUSは、多分その時のことを後悔しているのだろう。
それを察した綱吉はXANXUSの背中へとぎゅうと腕をまわして抱きしめた。上から包み込まれるように抱きしめられるのも好きなのだが、自分が上に乗り身体全体を密着させて抱きしめるのも好きだった。
どちらも暖かくて、幸せな気分になれる。
それを教えてくれたのがXANXUSというのに、こんな小さなことで後悔などして欲しくないのだ。
まだ、力が入らない腕がふるふると震えているが、こちらの考えに気付いたのか、XANXUSもゆるりと抱きしめ返してくれた。
「あのときがあるから、今があるんだよ。初めてのときが散々だったから、本当に身体合わせられた時は嬉しかったし」
さらり、と話しているがこのときの綱吉は本当に嬉しかったのだ。
初体験での恐怖がしばらく綱吉の中に大きく残っていたのだが、それを取り除けるように優しく接してくれたのも、長いこと触れるのを我慢してくれたのも、痛みが少ない繋がり方を調べてくれたのもXANXUSだった。
時間はかかったが、ぶっきらぼうで他人に頓着しないXANXUSが必死で自分のことを考えてくれていて、余計に好きになれたのもその時だった。
痛みが全くない訳ではないが、今考えてみるとあの時の痺れは快楽へと繋がっていたようにも思える。
今はもちろん気持ちがいい。すごくだ。
その時々によってふわふわに浮くようだったり、ぎゅうと身体が締め付けられるようだったり、熱がお腹に溜まるようだったりと気持ちよさの感覚は違うものの、いつも気持ち良くしてもらえるのだ。
「今はすごい気持ちいいよ、XANXUSとするの大好き。XANXUSのことも大好き」
すり、とXANXUSの胸に顔を擦りつけると、XANXUSがぴくりと反応を示した。
見上げるとXANXUSは眉間の皺を寄せていた。
ん、と顔を傾けてXANXUSの困惑の原因を考えていると、下半身に違和感を感じ始めた。妙なほど身体に熱を帯び始めて、ふるると身体が震えてしまうのだ。
ふあ、と声をあげてしまう。違和感の原因は、XANXUS。先ほど繋げたままになっていた身体がまた臨戦態勢になっていたのだ。
「え、な、なんで」
「そんなことされて我慢できるほど俺は人間できちゃいねえよ、カス」
いい顔で笑うXANXUSに、焦ったようににこりと綱吉は笑顔を返した。やばい、かも、しれない。
「日本では『初夜』って言うんだってな」
「うん、結婚して初めての夜のこと、だよね」
「初夜は限界までするものだと聞いている」
綱吉はその言葉に真っ青な顔を返した。だれがそんな嘘を教えたんだ、と心の奥で叫んだ。
実際口に出そうとも思ったのだが、XANXUSが動き始めてしまったので全て別の声となって消えていった。
XANXUSの体力は、綱吉にとっても未だ無限としか言いようがない。
明日の自分の心配をしたかったが、与えられる快楽にまた溺れ始めてしまい、それすらもどうでもよくなってしまった。
それは結婚して初めての夜。
次の日綱吉が目を覚ましたのは、日もだいぶ高くなってからのこと。
しかし、本当に一日使いモノにならなかったのは言うまでもない。
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